「自分は他の人よりも疲れやすい」「周りの反応が気になってしまう」と感じていませんか。
もしかしたらそれはあなたがHSP（Highly Sensitive Person）の気質を持っているからかもしれません。
HSPは病気ではなく生まれ持った「感受性の豊かさ」という特性です。
この特性を持つ人はそうでない人に比べて職場でのストレスを感じやすい傾向にあります。
しかしHSPだからといって仕事で能力を発揮できないわけではありません。
大切なのは自分の特性を理解しそれに合った働き方を見つけることです。
この記事ではHSPの人がなぜ働きにくさを感じるのかをひも解きながら、心がすり減らない働き方や自分らしく輝くための心の整え方についてお話しします。
そもそも「HSP」ってどんな気質？
「私ってもしかしてHSPなのかも？」と感じたことはありませんか。
テレビやSNSで「HSP」という言葉を耳にする機会も増えました。
しかし具体的にどのような気質を指すのかまだよく知らない人もいるかもしれません。
ここではHSPとは何かその特徴やHSPの人がなぜ敏感なのかについて解説します。
自分の特性を理解する第一歩にしてください。
HSPとは？特徴とセルフチェック
HSPとはHighly Sensitive Personの頭文字をとった言葉です。
心理学者のエレイン・N・アーロン博士が提唱しました。
生まれつき「感受性が強く、非常に繊細な人」を指します。
病気ではありません。個性や気質の1つとして捉えられています。
HSPの主な特徴は、以下の4つです。
DOES（ダズ）という言葉で表現されます。
Depth of processing：深い思考
Overstimulation：過剰に刺激を受けやすい
Emotional responsiveness and empathy：感情反応が強く、共感力が高い
Sensitive to subtleties：些細なことにも気づく
これらの特徴に当てはまるか、エレイン・N・アーロン博士の提唱するセルフチェックで確認できます。
Webサイトなどで質問が公開されていますので参考にしてみてください。
「ただの気にしすぎ」ではない敏感さの意味
HSPの気質を持つ人は周囲から「気にしすぎ」「考えすぎ」と言われる経験があるかもしれません。
しかしこれは単なる性格の問題ではありません。
脳の扁桃体という部分の働きが非HSPの人と異なるためと考えられています。
HSPの人は外部からの情報をより深く詳細に処理します。
五感から入る情報はもちろん、人の感情や場の雰囲気まで敏感に察知するのです。
そのため普通の人には気づかないような些細な変化にも気づきそれを深く考える傾向があります。
この敏感さは豊かな感性や共感力にもつながる素晴らしい特性です。
HSPさんが働きにくさを感じる理由
HSPの人が仕事で疲れを感じやすいのには、明確な理由があります。
気質による特性が職場の環境や人間関係と合わない場合にストレスとなって現れるのです。
他人の感情を受け取りやすく疲れやすい
HSPの人は共感能力が高い傾向があります。
そのため職場の人間関係において同僚や上司の感情機嫌の変化を敏感に察知してしまうでしょう。
相手の感情に深く共感しすぎるあまりまるで自分のことのように感じてしまうケースも少なくありません。
職場の雰囲気や周囲の人間関係のいざこざなどもHSPの人にとっては大きな負担です。
他人の感情の機微を常に読み取ろうとすることで知らず知らずのうちに心がすり減ってしまいます。
結果として、必要以上に疲労を感じてしまうのです。
音や光環境からの刺激に敏感
HSPの人は五感が非常に敏感です。
そのためオフィス環境のちょっとした刺激が大きなストレスにつながる場合があります。
例えば、以下のような要素が挙げられるでしょう。
- 電話の音
- キーボードの打鍵音
- 同僚のおしゃべり
- 蛍光灯の光
- 室内の匂い
これらの刺激はHSPではない人にとっては気にならないレベルかもしれません。
しかしHSPの人にとっては集中力を妨げたり不快感を与えたりする原因となるのです。
常に多くの刺激にさらされることで脳が疲弊しやすくなります。
「ちゃんとしなきゃ」が自分を追い詰める
HSPの人は責任感が強く真面目な一面も持っています。
完璧主義な傾向があるため「ちゃんとしなければ」「期待に応えなければ」と強く思い込みがちです。
仕事においては些細なミスも許せないと感じたり自分の仕事ぶりを過度に反省したりするでしょう。
また周囲の評価を気にしすぎるあまり自分の限界を超えて頑張りすぎてしまうこともあります。
このような「ねばならない思考」は自分自身を精神的に追い詰める原因となります。
結果として燃え尽き症候群になったり、心身のバランスを崩してしまったりするケースも少なくありません。
心がすり減らない働き方をするには？
HSPの気質を持つ人が仕事で生き生きと働くにはどうすればよいのでしょうか。
心がすり減らない働き方を見つけるヒントは、自分に合った環境を選ぶことにあります。
「苦手」を避けるより「合う環境」を知る
HSPの気質を持つ人はどうしても苦手なことやストレスを感じやすい状況に目が行きがちです。
「これを避けなければ」「あれを克服しなければ」と考えることもあるでしょう。
しかし、大切なのは苦手なものを避けることだけではありません。
自分が最大限に能力を発揮でき心地よく働ける「合う環境」を知ることの方が重要です。
自分の特性を理解し「どんな環境ならストレスが少ないか」「どんな働き方なら集中できるか」を具体的にイメージしてみましょう。
それによって自分にとって最適な選択肢が見えてくるはずです。
HSPに向いている職場環境・働き方の例
HSPの人にとって心地よく働ける環境にはいくつかの共通点があります。
- 静かで落ち着いた環境：騒音が少なく集中できる空間はHSPの人にとって非常に重要です。個室やパーテーションで区切られたデスクなどプライベートな空間が確保できると良いでしょう。
- 刺激が少ない環境：強い照明や香料、頻繁な電話対応など五感を刺撃する要素が少ない職場が望ましいです。
- 人間関係が穏やかな環境：派閥争いや感情的な衝突が少ない人間関係が良好な職場。少人数のチームや個人で業務を進める時間が長い仕事も向いています。
- 自分のペースで働ける環境：急な割り込みやマルチタスクが少なく自分のペースでじっくりと業務に取り組める環境が理想です。
これらの要素を満たす職場は、HSPの人が本来持つ「深く考える」「共感する」といった能力を存分に活かせる可能性を秘めています。
在宅・フリーランス・小規模組織などの選択肢
HSPの気質を持つ人にとって従来のオフィスワーク以外の働き方も有効な選択肢です。
在宅勤務：自宅という慣れた環境で自分のペースで働けます。通勤のストレスもなく外部からの刺激も最小限に抑えられるでしょう。
フリーランス：自分で仕事内容や働く時間、場所を自由に決められます。人間関係もクライアントとの一対一が中心になるため煩わしさを感じにくいかもしれません。自分の得意なことや好きなことを仕事にできれば大きなやりがいにつながります。
小規模組織：大企業に比べてアットホームな雰囲気で働けることが多いです。人間関係も密になりがちですが、風通しがよく個人の意見が通りやすい環境であれば心地良さを感じられるでしょう。
これらの働き方は自分の特性に合わせた環境を自分で作りやすい点がメリットです。
自分らしく働くための心の整え方
働き方を変えることと並行して内面的なアプローチも大切です。
HSPの気質を理解し前向きに捉えることで心の負担を減らし自分らしく働くための土台を築けます。
「弱さ」ではなく「感受性の強さ」ととらえる
HSPの人は自分の敏感さを「弱点」だと感じてしまうかもしれません。
しかしそれは決して弱さではありません。
むしろ人よりも多くの情報を受け取り、深く共感できる「感受性の強さ」という素晴らしい才能です。
この感受性の強さは他人の気持ちを深く理解できる共感力や細やかな変化に気づく観察力、豊かな発想力につながります。
これらの能力は特定の仕事や役割において大きな強みとなるでしょう。
自分の特性を「弱さ」と否定するのではなく「個性」として受け入れることが心の安定につながります。
他人軸から自分軸へ。心がラクになる考え方
HSPの人は周囲の期待に応えようと頑張りすぎたり他人の評価を気にしすぎたりする傾向があります。
これは「他人軸」で生きている状態です。
しかしこの状態が続くと心が疲弊してしまいます。
大切なのは「自分軸」で物事を考えることです。
「自分はどうしたいのか」「自分にとって何が心地よいのか」という視点を持ちましょう。
他人の評価や期待に合わせるのではなく自分の価値観や感情を優先する練習をしてみてください。
最初は難しいかもしれませんが、小さなことから「自分軸」で選択する習慣をつけることで徐々に心がラクになります。
自分の感情に耳を傾けそれを尊重することが心の健康を保つ秘訣です。
自分のペースで少しずつ整えていこう
心の整え方には即効性のある魔法のような方法はありません。
大切なのは焦らず自分のペースで少しずつ取り組むことです。
完璧を目指す必要はありません。
例えば、
- 毎日5分静かな場所で深呼吸や目を閉じてリラックス
- 自分の好きなこと心が落ち着く時間を作る
- ストレスを感じたときに、その感情を紙に書き出す
といった小さな習慣から始めてみましょう。
「こうでなければならない」という思い込みを手放し、自分に優しく接すること。
それがHSPの人が自分らしく、心地良く働くための第一歩になるでしょう。
おわりに
HSPの気質を持つあなたは繊細で感受性が豊かです。
それは決して「弱み」ではなく、あなただけが持つ素晴らしい才能です。
この記事でご紹介した働き方や心の整え方を参考にあなたの特性に合った道を見つけてください。
自分を責めることなくありのままの自分を受け入れ、心から安心して働ける場所を見つけることが何よりも大切です。
あなたの繊細さが輝く働き方はきっと見つかるでしょう。
